独自のブレンデッドが絶妙な味わいに
(HIGH BALL)

バーのファーストドリンクは何か。ビール?ジントニック?  いや今はハイボールではないだろうか。近年特に人気が高まっているが、店主の松葉は「力を入れなければいけないドリンク。どうやって美味しくするか、をずっと考えていましたね」。ロンドンのハロッズでエジンバラクリスタルという、スコットランドのハンドメイドクリスタルの器を手に入れた。あまりの美しさに一目惚れ。これにハイボール用のウイスキーを入れることにした。最初はデュワーズなどを単体で入れていたが、「複数のウイスキーをブレンドしてみようと考え、最初はスコッチの王道の3タイプであるアイラ、スペイサイドとシェリー樽のウイスキーを混ぜてみました」。他にない味わいで好評を得てきたが、シェリー樽ものが少なくなってきたことなどもあり、レシピを変えることにした。
スコッチ7割をベースに、アイルランドと日本のウイスキーをバランスをとって作った。スコッチはスモーキーなアイラで、スモーキーかつクリアな飲みやすさを重視。度重なる研究の末、ウイスキー1:炭酸2.8の比率がベストと決めた。味わいの秘訣は、常温で保存しているウイスキーをいかに冷やすか。氷の量とステアの回数。ハイボール用のウイスキーをあらかじめ冷やして保存しておくとシャープな味わいになるが、常温のものはステアで冷やしていくと、まろやかさが出る。仕上げはすっきりレモンピール。クリスタルのボトルに収まる琥珀色の魔法を体感してみてはいかが。


 

継ぎ足し続けたオールドフレーバー
(BOWMORE)

バックバーに鎮座するちょっと小さめのボウモアの樽。飾りかと思うかもしれないが、この30年、ウイスキーファンを唸らせ続けてきた現役選手だ。実際のボウモアの樽を解体して、小さく作り直したもの。店や自宅で再度熟成させて楽しむよう、10リットルの樽に移し替えたものだ。「約30年前にお店に置いたもので、それからずっと半分減るごとに継ぎ足してきました。12年ものやノンエイジものを中心に、そのとき流通しているベストなものや、熟成させたら美味しくなるのではと思うものを入れています。時々古いものも入れています」(店主・松葉)。
今のボウモアに古いウイスキーのフレーバーが混ざると、他では感じることのできない味わいを醸し出す。木製なので揮発製があり、経年変化が楽しめる。ブレンドする作り手としては、まるで手作りカレーを継ぎ出して煮込んでいるような思いになるそうだ。その味は、有名なウイスキー評論家、デイブ・ブルーム氏が訪れてテイスティングした際、「エクセレント!」とメッセージを書き残したほど。
ボウモアのよさについて、松葉は「温暖な山間部で作るウイスキーは穏やかな熟成をするが、ある意味、頭の中で想像がつく味わい。しかし、潮風を浴びながら熟成させるボウモアには荒々しさのようなものがある。若いウイスキーはただ単にスモーキーなだけだが、過酷な環境で20年、30年を過ごすと複雑極まりない味わいになる。強いスモーキーフレーバーが段々段々穏やかに。海沿いの蒸溜所で育ったウイスキーは想像を超える変化をする。それが海の熟成、ボウモアの最大の魅力でしょうね」。Bar,Kで30年熟成を重ねる小さい巨人とも言えるボウモア樽も、絶妙な味わいだ。
(ALL TEXT by 清水泰史)