継ぎ足し続けたオールドフレーバー
(BOWMORE)
バックバーに鎮座するちょっと小さめのボウモアの樽。飾りかと思うかもしれないが、この30年、ウイスキーファンを唸らせ続けてきた現役選手だ。実際のボウモアの樽を解体して、小さく作り直したもの。店や自宅で再度熟成させて楽しむよう、10リットルの樽に移し替えたものだ。「約30年前にお店に置いたもので、それからずっと半分減るごとに継ぎ足してきました。12年ものやノンエイジものを中心に、そのとき流通しているベストなものや、熟成させたら美味しくなるのではと思うものを入れています。時々古いものも入れています」(店主・松葉)。
今のボウモアに古いウイスキーのフレーバーが混ざると、他では感じることのできない味わいを醸し出す。木製なので揮発性があるため、経年変化が楽しめる。ブレンドする作り手としては、まるで手作りカレーを継ぎ出して煮込んでいるような思いになるそうだ。その味は、有名なウイスキー評論家、デイブ・ブルーム氏が訪れてテイスティングした際、「エクセレント!」とメッセージを書き残したほど。
ボウモアのよさについて、松葉は「温暖な山間部で作るウイスキーは穏やかな熟成をするが、ある意味、頭の中で想像がつく味わい。しかし、潮風を浴びながら熟成させるボウモアには荒々しさのようなものがある。若いウイスキーはただ単にスモーキーなだけだが、過酷な環境で20年、30年を過ごすと複雑極まりない味わいになる。強いスモーキーフレーバーが段々段々穏やかに。海沿いの蒸溜所で育ったウイスキーは想像を超える変化をする。それが海の熟成、ボウモアの最大の魅力でしょうね」。Bar,Kで30年熟成を重ねる小さい巨人とも言えるボウモア樽も、絶妙な味わいだ。